我が家はあまり裕福な家庭ではなかったし、子供ながらに俺もそれを感じ取っていた。

ある日、友人Ａと友人Ｂと遊んだ。ＡとＢはローラースケートを履いていた。
その頃、俺のうちは金がなくて欲しい物があっても買ってもらえなかった。そして、仕方なく
二人の後を走って追いかけた。しばらく走ってると自分の家の前に近づいてきた。家の前
では母がじょうろで花壇に水をかけていた。母は友人ＡとＢにこんにちは、と声をかけていた。
息が切れて歩き出した時、母が「二人ともローラースケート履いてるけど欲しくないの？」
と少し悲しそうな笑顔で話しかけてきた。俺は、家がどんな状況か分かっていたから、「別に
欲しくないよ」と、一言だけ言ってまた走って追いかけていった。母は「そう」、と悲しい笑顔交じりで
言った。実はすごく欲しかった。楽しそうにローラースケートで遊んでいるＡとＢがとても羨ましかった。
なんだかいても楽しくないし、二人の邪魔になりそうだったから適当に「歯医者に行く」と言ってごまかして帰った。母の悲しい笑顔を思い浮かべると何だか泣けてきて、泣きながら帰った。家に帰ると、母は
花壇の草むしりを始めていた。汗を拭きながらせっせと草をむしっている母を見ていると、少しでも
母の手助けをしてあげたいと思い、草むしりを手伝った。母はローラースケートのことを気にしているようで、何度も「欲しい？」と聞いてきた、欲しくても絶対に欲しいとは言えなかった。　

　父と母はいつも泥まみれになりながら日に焼けながら仕事をしているのに、どうして父と母はこんなに
つらい思いをしなければいけないんだろう？と考えると、胸がギューっと締め付けられるような感じがして
ついつい泣いてしまった。

今となっては思い出です。当時、父と母は園芸を生業としてました。現在も、園芸をしています、そして
俺もその仲間になって３人で花を作っています。生活はあの頃とは一変しましたが、あの時幼い自分が
経験したことは小学４年生の自分にはすこし重いものでした。今でも、あのときを考えると涙が流れてしまいます。（今も少し泣きながら書いてます）