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宮前おじいちゃんとの3ヶ月


宮前おじいちゃんのおはなし。
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/news7/1350569466/


miyamaesan



1: trs 2012/10/18(木) 23:11:06.36 ID:JB68BRjQ0

宮前さん

・某リハビリ病院に入院
・78歳、大好きな奥さんと二人暮らし
・軽度の歩行困難
・小柄.いつもニット帽かぶってる

初めてだけど、誰かに聞いてもらいたくて、スレを立てました。
3ヶ月くらい前から今日までのできごと。
おそらくだいぶ読みづらいだろうかと思いますが…誰か読んでくださる人がいれば嬉しく思います。





2: trs 2012/10/18(木) 23:15:21.24 ID:JB68BRjQ0

私の祖父が入院した。
買い物の途中に倒れて、救急搬送。
脳内出血の重いもんで一時は生死をさまよったが一命をとりとめ、
1ヶ月程してリハビリ専門病院に転院した。

そのころのおじいちゃんは簡単に言うと、
生後数ヶ月の乳児みたいなかんじ。
声はほとんど出なくって、起きてたり、眠ってたり。
もちろん飲食できない。

胃に栄養分を通すためのチューブをつけてた。
もちろんオムツ。


4: trs 2012/10/18(木) 23:20:49.34 ID:JB68BRjQ0

宮前さんはそのリハビリ専門病院の病室で出会った。
4人部屋の、おじいちゃんの向かい。

宮前さんは小柄なおじいちゃんで、目はぎょろっとしてて。
千と千尋に出てくるカエルに紺のニット帽をかぶせた感じ。
ベッドの上にちょこんと座ってた。

「えらい可哀想な…」って思ってたのかな、
そんな顔してこっち見てた。

挨拶を交わすくらいで、当初はそんな関わりがなかったけど、
ほとんど毎日おじいちゃんのお見舞いに行ってたから、
その中で自然と宮前さんについても詳しくなっていった。


5: trs 2012/10/18(木) 23:27:52.87 ID:JB68BRjQ0

基本、宮前さんは眠ってるか、座ってこっちを見てるか。
奥さんが2、3日に1度来てくれるときは、これでもかってくらいに甘えてた。
奥さんは大阪のおばちゃん!ってかんじの人で、こぎれいだけどド派手。
さばさばしてて、宮前さんにも容赦なかった。

でも、バランスがとれてるっていうのかな、
お似合いの夫婦。


6: trs 2012/10/18(木) 23:35:24.13 ID:JB68BRjQ0

奥さんが帰るときは、必ずエレベーターまでお見送り。
奥さんがエレベーターに乗って帰って行ったあとも、
数分の間はじっと、そこから動かないでエレベーターを見つめてた。

宮前さんは病気の後遺症で物忘れが多くなってるみたいで、
忘れちゃ行けないように、奥さんといつも文通みたいなことしてた。

奥さんがお見舞いに来たときに必ず、
小学生のころに使ってた落書き帳みたいなのに
1ページずつ手紙を書いていってた。

奥さんがこない日は、ガサゴソ荷物をあさって、その手紙を小さな声を出しながら読んで→
ため息→なおす→ガサゴソ→読む→ため息→なおす…みたいなことを続けてた。


7: trs 2012/10/18(木) 23:44:53.35 ID:JB68BRjQ0

ある日の夕方、病室に入って行くと、宮前さんがぐずぐず号泣してた。

「だっで…だっで…ずびずびずび」
「そんなんゆうたかてしゃーないやないの!」
「だっで…だっで…わしが帰らな、母さん(奥さん)一人でご飯どうすんの?ずびずび」
「わたしはこっから帰ってコンビニで何か買って帰るから、大丈夫!」
「でも…でも…なんでこんなときに…ずびずび」

その時間はちょうど宮前さんのリハビリの時間やったみたいで、担当の先生焦ってた。

「だっで…おまえの誕生日…一人で過ごすなんか可哀想やんか…ずびずび」
「大丈夫!父さん(宮前さん)が帰って来てからお祝いしてくれたらいいから、それでいいやん!」
「だっで…だっで…ずびずびずび」
「父さん、お誕生日お祝いしてくれるって気持ちあるんやったら泣き止んで?私そっちの方が嬉しいわ」
「うん………



………ずびずびぐすんぐすん」

「父さん退院したらケーキかって、ふたりでお祝いしような」

何かのドラマかと思った。
後ろで聞いてて、感動した。


9: 私事ですが名無しです 2012/10/19(金) 19:51:25.00 ID:???0

宮前おじいさん可愛い


10: trs 2012/10/19(金) 22:23:29.12 ID:1GvT76uq0

読んでくれてありがとう。
嬉しいです(^^)
今日も少しだけ、よろしくお願いします。


ある日、いつものように病室に行って、私と母とで、私のおじいちゃんのリハビリを見てた。
おじいちゃんは入院時より少しだけ病状が良くなって、目を覚ましていることが多くなってた。

リハビリの先生がおじいちゃんを車いすに移動させるとき、いつもはだらーんとしててなされるがままだったけどその日は初めて、「んーーーっ」て声を出して、顔もしかめっつらで、
左手でベッドのさくをぐーっとに握って、頑張って立とうとしてた。
その姿を見て、私と母も「頑張れ、頑張れ」って、小さい声で応援してた。

そしたら後ろからも「頑張れ、頑張れ」って小さい声がした。
振り返ってみると、宮前さんがベッドの上で起き上がって、両手をかまえるように胸の前で握って(ファイティングポーズみたいな)真剣な顔でおじいちゃんを応援してくれてた。


11: trs 2012/10/19(金) 22:26:54.65 ID:1GvT76uq0

そこらへんからかな、宮前さんと私たち家族(主に私)はちょくちょくお話するようになった。

そこでわかったこと。
宮前さんは私に奥さんの話をするときは偉そうに話す。
「あいつが~」みたいに。
でも、奥さんが来て甘えるときは、「母さん」とか「お母さん」になる。
声も少し高くなる。


12: trs 2012/10/19(金) 23:56:28.04 ID:w4JZHiTN0

私のおじいちゃんと宮前さんは同じ日に入院したんだけど、最初の方は宮前さんは携帯電話を首からぶら下げてた。
奥さんと自由に連絡が取れるように。
最初の方はしょっちゅう奥さんに電話してたし、しょっちゅう奥さんからも電話がかかってきてた。

宮前さんが電話かけるときは、小さな背中をさらにせばめて、尖った口をさらに尖らせて、右手に構えてひそひそとしゃべる。
ただ、宮前さんのひそひそ声は大きい。普通に聞こえる。
奥さんから電話がかかってくると、ものすごい大きな着信音がする。たぶんボリューム最大。

かけたときは弱気。
「おかあさーん。今日は来てくれへんのーん?」
みたいな。高い声の甘えた声で話す。
かかってきたときはちょっと強気。
思春期の男の子か。


13: trs 2012/10/19(金) 23:57:43.45 ID:w4JZHiTN0

ある日、物忘れの多い宮前さんは携帯電話の使い方を忘れた。
ボリューム最大であろう着信音が何度も鳴る。

鳴り続ける携帯を耳にあてて「もしもし」って言ってみたり、ぽちぽちいろんなボタンを押してみたり。
この頃はまだまそんなに親しくなかったから、そんな宮前さんに声かけれなかった。
携帯電話が鳴り止むと、しばらく着信を待ってるような感じで両手で携帯を持って、じっと見つめてた。
飽きたらベッドに横になって即寝。
その日はそんなのを繰り返してた。


14: trs 2012/10/20(土) 00:04:25.03 ID:ft9GlMja0

そう言えば、宮前さん、らんま1/2に出てくる小さいおじいさんにも似てる。
ギョロ目と小さいところと尖った口が。
頭ははげてなくって、いつもニット帽やけど。
そしてえろくないけど。
あんなに小さくもないけど。


15: trs 2012/10/20(土) 00:22:56.63 ID:ft9GlMja0

次の日、病室に入ると宮前さんの奥さんも来てた。
宮前さんはいつもみたいにベッドの上に座って、首からぶら下げた携帯をいじりながらなんか話してた。
奥さんはわーわーずっとしゃべってた。
奥さんの声は旧どらえもんの声を高くした感じ。大きい声ではきはきと話す。

宮前さん、自分がどのように電話に出れず、操作したかを説明。これを何度も繰り返す。
奥さんは、自分がどれだけ心配したか、なんで電話に出なかったの?と聞くだけ聞いて、それらを何度も繰り返す。

お互いの話をお互いが聞かず、それぞれがそれぞれの話を続ける。

年をとったら人の話を聞かなくなるって聞くけど、本当やったんやーなんて思いつつ、
それが自然に成り立っているふたりの関係を、素敵だな、なんて思った。


16: trs 2012/10/20(土) 00:31:36.86 ID:ft9GlMja0

しばらく私のおじいちゃんの方に集中してたから、経緯はわからないけど、
気付いたときには宮前さん夫婦は上記のスパイラルから抜け出してた。

奥さんが宮前さんの携帯電話にその場で電話をかけ、宮前さんが取ってみる、ってことになってた。
(宮前さんはベッドの上、奥さんはベッドの横のいすに座ってる)


奥「ほいじゃあかけんで、」
宮「うん、かけてー」

ここで2人共耳に携帯電話をあてる。

奥「あんたはまだ耳に当てたらだめやないのーほらちゃんと持って」

奥さん的確なつっこみ。
宮前さん、携帯電話を両手で持って着信を待ち構える。
不自然な沈黙の直後、最大ボリュームの着信音が鳴り響く。

奥「なった!なった!」
宮「なった!母さん、なった!」

ふたりともなぜかハイテンション。


17: trs 2012/10/20(土) 00:45:21.17 ID:ft9GlMja0

奥さんの助けがあって、宮前さんの携帯との通話に成功。
ここでやっと2人共耳に携帯電話をあてる。

奥「もしもしー。おとーさん、おとーさん、聞こえてますか?」

奥さん後ろを向く。
もちろん声は大きい。

宮「もしも………………………えっ?」

おとーさん、の時点で、宮前さん、奥さんの方を向く。

奥「おとーさん、おとーさん、聞こえてますか?」

奥さん再チャレンジ。
宮前さん、携帯電話を耳から外して、膝の上に置いて、奥さんの方を向いたまま、

宮「うん、聞こえてるよ」

コントかと思った。


19: trs 2012/10/20(土) 00:54:08.87 ID:ft9GlMja0

奥「あんたー!携帯電話耳から離してしもたら意味ないやないのー!」

嬉々とした表情で振り返った奥さん、的確なつっこみ。
宮前さん、耳に携帯をあてる。従順。

奥「もしもし、おとーさん、おとーさん」

今度は宮前さんと向かい合いながら話す奥さん。

宮「もしもし、もしもし………聞こえます、おかーさん」
奥「あんたちゃんと電話のほうから聞こえてる?もういっこの耳からじゃない?」

宮崎さん、片方の耳を手で塞ぐ。

宮「もしもし、おかー」
奥「もしもし、おとーさん」
宮「聞こえる!聞こえる!」
奥「では、切りますよ」
宮「はい」

ひとまず、携帯の故障ではないことが確認できたみたい。
奥さんはそのあと、宮前さんにわーわー携帯の出かたを教えてた。
宮前さんはふんふん聞いてた。


20: trs 2012/10/20(土) 00:57:59.09 ID:ft9GlMja0

私と母は笑いをこらえるのに必死で、もうだめだった。
というか、ちょっと笑ってしまってた。

携帯電話事件はこれで無事に終わった。


23: 私事ですが名無しです 2012/10/21(日) 11:31:12.04 ID:rGKEftMwP

>>1
ワロタw
でも誕生日のくだりは泣いた…
もっと宮前さん知りたい。続き待ってるよん


25: trs 2012/10/21(日) 15:45:54.60 ID:aBACNKo80

読んでくれてありがとう(^^)
今からまた少し書きます。よろしくお願いします。


ある日、宮前さんはいつものように、奥さんからのメッセージを読んでた。
私のおじいちゃんのベッドが向かいにあるから、一応こっちに背を向けて、
ベッドのふちに腰掛けて、おそらく本人なりの小声で。

内容を完璧には覚えてないけど、宮前さんが読んでた感じは、こんなのだった↓

「9月○日、○よーび。おとーさん、今日はたいちょーどーですか。
私は、きょーは、足のびょーいんに行くので、おとーさんの病院には行けません。
明日、9月○日は行きます。リハビリがんばってくださいね」

奥さんの手紙はいつもリハビリ…のくだりで終わる。


27: trs 2012/10/21(日) 15:55:23.23 ID:aBACNKo80

宮前さんは不満げに何かぶつぶつ言ってた。

私のおじいちゃんのリハビリが一段落ついたので、
宮前さんの方を見てみた。
ら、待ってました!って感じで宮前さんがこっち見てた。

宮「今日は何日?」
私「○日ですよー」
宮「こんなもん……わからんわなあ!」

宮前さん苦笑しながら、奥さんのメッセージを見せてくれた。

宮「今日が何日かわからんな、あいつがいつ来よるかなんて、わからんわなー!
  こんなん、今日の日付も書いといてくれな…わからんわー!」

ちょっと偉そうに奥さんを批判する宮前さん。
宮前さんのベッド脇にはカレンダー。

確かに今日が何日かわからな、奥さん来る日もわからん…
なんて妙に納得してしまったけど。

これも病気の後遺症なのかな。
もしかしたら宮前さんはもとから相当天然だったのかなーなんて真面目に考えた。


28: trs 2012/10/21(日) 16:05:03.61 ID:aBACNKo80

その日初めて文通ノートを見せてもらった。

宮前さんの奥さんからのメッセージは、
筆ペンみたいなもので、超特大サイズで書かれてあった。

毎回、宮前さんを気遣うひとこと、明日(明後日)は○○で来れません、
次はいつ来るか(○月○日って書いてある)、リハビリ頑張ってね」の文字。

温かい人だなと思った。


30: trs 2012/10/21(日) 16:20:04.51 ID:aBACNKo80

宮前さんの奥さんは70代後半、声は初代どらえもんの声を高くした感じ、
髪型は林家パー子。化粧もばっちり、唇はいつもショッキングピンク。
いつも明るくって元気。優しい。
とても気さくな方で、きっとお友達も多いと思う。

奥さんはいつも、電車とバスを乗り継いで病院へ来る。
宮前さんが入院するようになってから、膝を痛めてしまったらしい。
腰もまがっていて、杖を持って歩いてる。

宮前さん夫婦には遠方に嫁いだ娘さんが一人いるそう。
宮前さんが入院してから約3ヶ月のあいだ、
娘さんを見かけることはなかった。

病院から帰ろうとすると必ず
「もう帰るんか。もうちょっとおってよ」なんて甘える宮前さんに
「私かてしんどいのよー」なんて、笑顔で言ってたけど、
本当にしんどかったと思う。


37: trs 2012/10/22(月) 00:20:01.05 ID:c5gUS4v20

私のおじいちゃんの病状は入院当初よりだいぶ回復してきた。
起きてる時間が多くなった。
言葉は出ないけど、声は出るようになった。
たまに笑顔を見せてくれたり、拒否反応を示すこともでてきた。

だからこそ、やんちゃになった。

一時期、おじいちゃんは鼻チューブを頻繁に抜くようになった。


38: trs 2012/10/22(月) 00:26:02.93 ID:c5gUS4v20

私や私の家族がいるときは手を握ったり、気をそらせたり、
ときには力づくでも鼻チューブ抜きを防ぐ事が出来た。
私たちがいても、オムツ替えの間のわずかな隙に鼻チューブを抜くこともあった。

そんなおじいちゃんを目の当たりにして、
いつからか宮前さんがおじいちゃんを見ててくれるようになった。

私が病院へ行くと、
「今朝も抜いとったわー」とか、
「今日は抜かんと頑張ってはるよー」とか、
教えてくれるようになった。


39: trs 2012/10/22(月) 00:30:36.35 ID:c5gUS4v20

宮前さんの奥さんが来てるときは、ふたりして見ててくれた。

ある日は、私がお見舞いに行った直前に抜いたそうで、
夫婦そろって、抜くに至った経緯を話してくれた。

奥「さっきまではちゃんと我慢してはったんよ。
  でも、私がこの人(宮前さん)の方向いてる隙にぽっと抜いてしまってはったんよ
  ついさっきまでちゃんと我慢してはったんよー」

宮前さんも同時にしゃべってたけど、奥さんの声が通るのと、勢いがあるのとであんまり聞き取れなかった。
ちゃんとふたりに向かって返答したけど。


40: trs 2012/10/22(月) 00:41:19.81 ID:c5gUS4v20

鼻チューブを入れる時は、看護士さんによってはなかなか痛いらしい。
入れてしまえば違和感がある程度だそうだけど。
私のおじいちゃんも、入れる時はすごく嫌がったし、むせるし、
苦しそうに顔を真っ赤にして抵抗してた。

宮前さんはいつも、
ベッドに寝てるか、そのまま座ってるか、リハビリしてるかのどれかだった。

鼻チューブを入れるときはいつも、座って、おじいちゃんを見てた。
見てたというより、応援してくれてた。

あるときは目を真っ赤にして、ぐすんぐすん言ってた。

そのときは宮前さん風邪なんかなーとかって思ってたけど、
奥さんが来てるときに「かわいそうやーかわいそうやー」って言って
また目を真っ赤にして、ぐすんぐすん言ってたから、
おじいちゃんを見て、泣いてくれてるってことに気付いた。


41: trs 2012/10/22(月) 00:54:50.88 ID:c5gUS4v20

ある日、病院へいくと、
宮前おじいちゃんはリハビリの先生と奥さんのふたりから、
説教を受けてるっぽい日があった。

奥さんがわーわー行ってるのと、
部屋に入ると、宮前さんが小さな背中をさらに小さくしてたから
なんとなくそう思った。


42: trs 2012/10/22(月) 03:27:37.20 ID:c5gUS4v20

宮前さんは両足共、足先からひざまで包帯みたいなものでぐるぐる巻にされてた。

宮「こんなんしとっても一緒やん…なんも悪いとこないのに…」
奥「悪いとこないことない。あんたは膝に水がたまってるんやって。しとかなあかんの」
先生「そうですよーそうですよー」
宮「そんなことゆうたかて…こんなんしとっても一緒やん…なんも悪いとこないのに…」
奥「悪いとこないこと…

こんな会話をずっと繰り返してた。
奥さんが頼もしかった。
でも、宮前さんはどうも納得行かない様子だった。


43: trs 2012/10/22(月) 03:36:36.46 ID:c5gUS4v20

また別の日、その日は宮前さんの奥さんの来ない日だった。
ベッドの上で座ってる宮前さんからのちらちらした視線を感じた。

宮「こんなもん、~~~…なあ、」

ふと目が合ったと同時くらいに宮前さんは話し始めた。
宮前さんは後遺症からか、ときどき何を話しているのかわからないときがある。

私「どうしたんですか?」

宮前さんはペラッと布団をめくり、投げ出した両足のズボンの裾をめくってった。

宮「ほら見て。ここ、こーんなぐるぐる巻きにされてもうて…ほらー」

両足の膝の上までくりくりと裾をめくっていき、
サポーターみたいなものを外して
包帯みたいなものもほどいてった。


44: trs 2012/10/22(月) 03:50:02.16 ID:c5gUS4v20

宮「ほら、なーんも悪いことないのに、こんなぐるぐる巻きにされて。
  これじゃもっと悪なってしまうわ!」

どや!って感じの苦笑じみた表情で言う宮前さん。
だけどその両膝は、素人の私からしても不自然に腫れているのがわかった。

私「え!めっちゃ腫れてますやん!!!
  両方とも………痛くないんですか??」

ちょっとオーバーめに言ってみた。

宮「………痛ないよー。………腫れてるかな??」

宮前さん、ドヤ顔から一変、不安そうな顔になって、
いそいそと包帯みたいなものたちを元通りにもどしてった。

この出来事があってから、
宮前さんはぐるぐる巻きの両足について何も言わなくなった。


45: trs 2012/10/22(月) 03:57:20.25 ID:c5gUS4v20

その後わかったこと。

階段の多いところに住んでる宮前さんは
家に帰って生活をするためのリハビリとして、
段差の上り下りの練習をしてたそう。

先生曰く、宮前さんが頑張りすぎ、膝に水がたまってしまったとのこと。
(私も宮前さんがベッドの上で膝の曲げ伸ばしの自主練習をしていたのを何度も見た)

膝はどんどん悪くなって、少しの移動、
トイレに行くときも、奥さんをお見送りに行くときも、
車イスで移動するように、ということになった。


46: trs 2012/10/22(月) 04:06:06.80 ID:c5gUS4v20

それでも聞かない宮前さん。
(ただ忘れてしまってただけかも知れないが。)

奥さんがお手洗いに行ってるだけでも
「どーこ行ったんやろなあ…」とかってぶつぶつ言いながら、
トテトテと歩いていってしまう。

ある日、奥さんが帰ろうとすると、
奥さんがとっさにバッと振り返って
「アカン!!!あんたじっとしとかなー!!!」ってものすごい大きい声で言った。


47: trs 2012/10/22(月) 04:09:44.33 ID:c5gUS4v20

奥さんの俊敏な動きにびっくりしながら宮前さんの方を見ると、
宮前さんは布団をめくって足をベッドの外にやったところだった。

さすが奥さんの勘だなって思った。

「ん。」ってしょんぼりしながら宮前さんは言って
奥さんは再三「見送りはいいからじっとしてなさい」って言って。

そして奥さんは帰ってった。


48: trs 2012/10/22(月) 04:12:56.54 ID:c5gUS4v20

宮前さんは何考えてるのかよくわからん表情で
じーっと一点を見つめてて。

しばらく経って、なんか音がするなと思って振り返ってみたら、
宮前さんが車いすに乗って病室から出てくとこだった。

ちょうど私も帰る時間だったので、
その少し後に病室から出て行くと、
宮前さんは奥さんが降りて行ったであろうエレベーターの前で
じっとエレベーターを見つめてた。


49: trs 2012/10/22(月) 04:14:37.00 ID:c5gUS4v20

時間的に、きっと奥さんのお見送りはできなかったと思う。

宮前さんの背中が寂しそうで、なんとなく、声をかけることができなかった。


50: trs 2012/10/22(月) 04:21:35.19 ID:c5gUS4v20

宮前さんが言ってた。

「うちはふたり暮らしやから、俺がここへおったらあいつはひとりやねん」
「ひとりでご飯作って、食べて、ひとりで生活してるから、心配や」
「昔は良かったよ、娘が嫁いで、ふたりで暮らすのん。楽しかった」
「やっぱり家族は近くにおるのが安心やな。あんたとこみたいに」
「今あいつが倒れてしもたら、誰もみるもんがおらへんから心配や。俺が元気やったらみてやれるのに…」

私は、いろいろあって、今もあんまり人を信じられないけど、
宮前さんと接してると、この世には本当に心根の良い人もいるんだなって実感できた。


51: trs 2012/10/22(月) 04:24:31.09 ID:c5gUS4v20

ある日、宮前さんがずびずび言ってた。
というより、嗚咽に近いものがあった。
奥さんも宮前さんの背中をさすって、珍しく真剣な顔してた。


52: 私事ですが名無しです 2012/10/22(月) 09:15:51.29 ID:1t4qh7FhP

通勤中なのに涙が…


53: 私事ですが名無しです 2012/10/23(火) 07:23:23.47 ID:8ChLoVsCP

宮前さんになにが!?


55: trs 2012/10/24(水) 13:29:55.59 ID:HxFVNW2c0

読んでくださってありがとうございます*
51の続きを書いていきます。

いつもと明らかに様子が違うので、ちょっと気になってた。
ふたりの会話(主に奥さんが話してた)を聞いてわかったこと。


宮前さんは、山手の一軒家に住んでいる。
坂道が多く、玄関に入るまでも階段がある。

その家に帰るために、宮前さんはリハビリを頑張っていたけれど、
膝の状態や体の状態、今後のことを考え、奥さんが引っ越しを決めたとのことだった。

奥「あんたの事考えてのことやねん、わかってな」
宮「ずびずび……あー………じゃあ俺はもうあっこには帰れんのかあ………ぐすんぐすん」
奥「新しいおうちはマンションで小さいとこやけど、ふたりで頑張って行こう」


56: trs 2012/10/24(水) 17:36:52.80 ID:K1nLiaS20

宮「迷惑かけるなあ……」
奥「家はそんままおいとくから、マンションで暮らして、父さんの具合が良うなったら、またいっしょに帰ろう」
宮「………ぐすんぐすん」
奥「あんたが植えてたんも、今きれいに咲いてるよーあれも取ってしまわんなあかんけど」
宮「そーかー…………ぐすんぐすん」
奥「いっしょにいちから、な、頑張ろうな、父さん」

宮前さんの背中をさする奥さんの小さな背中が、私には少し不安げにうつった。
でも、宮前さんの奥さんは強い人だと思う。


57: trs 2012/10/24(水) 17:40:28.52 ID:K1nLiaS20

それから2、3日後かな。詳しくは忘れたけど。
宮前さんが写真を眺めてて、それを見せてくれた。

宮「これ、俺が植えてん」

ちょっと誇らしげな顔、もといドヤ顔で。
尖った口の端をにやっとつり上げながら。

おそらく使い捨てカメラで撮った写真。
満開のコスモスが写ってた。


58: trs 2012/10/24(水) 17:43:33.37 ID:K1nLiaS20

私「きれいですねー」
宮「やろー。でもなー、こっから引っ越すねんなー」

写真を眺めながら、宮前さんは言った。

宮前さんは私には弱いところを見せない。
愚痴は言うけど、辛さやしんどさは見せない。

泣いたり、甘えたりするのは、奥さんにだけ。


59: 私事ですが名無しです 2012/10/24(水) 17:55:34.80 ID:B3EuxizkP

泣けるーこんな夫婦ほんまにおるんやぁ(T-T)
こんな伴侶みつけたいわぁ。泣ける。。泣ける。。


61: trs 2012/10/24(水) 18:04:46.66 ID:K1nLiaS20

>>59さん

素敵なコメント、ありがとうございます(^^)
宮前さん夫婦の素敵さを誰かにも知ってもらいたくて、このスレを立てました。
そのように感じていただけて、本当に嬉しく思います。

10月18日までの出来事ですが
思い出す限り書いて行きたいと思いますので、
ときどき見にきてくださると嬉しいです。


60: trs 2012/10/24(水) 17:59:44.84 ID:K1nLiaS20

宮前さんはよく一緒に
私のおじいちゃんのリハビリを見てくれてた。
私のおじいちゃんは後遺症が重く、
その頃はベッドの上でのリハビリが主だったから。

上手くいくと、目をらんらんと輝かせながら
尖った口で、「ようしはったな」って言ってくれたり
「おおー パチパチパチ」って拍手してくれたりとか
純粋に喜んでくれた。

あんまり自発的な人でないから、
目が合ったときとか、何か言ってくれてた。
多分、気を使ってくれてたんだと思う。


62: trs 2012/10/24(水) 18:35:05.82 ID:K1nLiaS20

私のおじいちゃんが少しの間、車いすに乗れるようになった。
その日から、リハビリは極力、リハビリ専用室でするようになった。

リハビリ専用室には、他の患者さんも20~30人くらいて、
それぞれがそれぞれのリハビリをしている。


63: trs 2012/10/24(水) 18:45:47.59 ID:K1nLiaS20

ある日、おじいちゃんのリハビリについていくと
リハビリ中の宮前さんを見かけた。

先生といっしょに座って、
一生懸命、言われた通りに足をパタパタさせてた。
「いち、に、さん、、、」って数えながら。
手をぐーぱーさせたり、首のストレッチをしたり。

リハビリしてるときももちろん、ニット帽をかぶってた。
可愛いかった。


64: trs 2012/10/24(水) 19:05:19.78 ID:K1nLiaS20

ある日は、おじいちゃんのリハビリを見ていると、
すぐ隣のスロープに宮前さんがやってきた。

お互い頭をペコッと下げて挨拶をするだけだった。

宮前さんはスロープを両手につかんで、その間を一歩一歩歩いて行く。
宮前さんは後遺症からか、いつも屈んで超小刻みに歩いてたんだけど、
リハビリの最中はひとつひとつ、先生の指示通りに歩いてた。
背筋をのばしてーとか、いろいろ。(忘れちゃった)

先生が「そう!宮前さん!そうです!」とかってほめてくれてたけど
宮前さんは何ともないようなふうを装って歩いてた。
完全にドヤ顔だった。


65: trs 2012/10/24(水) 19:37:51.95 ID:K1nLiaS20

宮前さんがスロープを往復し終えるころには、
いつもの超小刻み歩き方ではなく、元気な人と同じように歩けてて、
リハビリってすごいなあって、改めて感じたくらいだった。

宮前さんのリハビリが終わり、宮前さんは先生に車イスを押されながら、私の前を通った。
純粋に『宮前さん頑張ってはるなあ』って思ったし、宮前さんドヤ顔だし、
「頑張ってましたねー。すごい!」って言ったら、
照れたような笑顔で「そうかな。ありがとー」って言ってくれた。


66: trs 2012/10/24(水) 19:38:53.65 ID:K1nLiaS20

おじいちゃんのリハビリが終わって部屋に帰ると、
宮前さんはドヤ顔のままだったから、もう一度声をかけてみた。

私「さっき頑張ってはりましたねー」
宮「そうかなー。先生の言う通りにしてただけやけどな。ちゃんと歩けとった?」

尖った口をさらに尖らせて、目をきょろきょろさせて言う宮前さん。
素直な人だなと思った。

私「歩けてましたよー!」
宮「そうかなー。先生の言う通りにしてただけやけどな。」

宮前さん、誇らしげな顔してた。

私の祖母も十数年入院していて、
その間、何度かリハビリをしてもらってた期間がある。
その中で、祖母も含め、いろいろな患者さんに出会ってきたけど
宮前さんほど一生懸命に頑張ってリハビリに取り組む人は、ごく少数だと思う。


67: trs 2012/10/24(水) 19:58:23.33 ID:K1nLiaS20

宮前さんの奥さんは前程頻繁に病院に来れなくなった。
それでも、3日に1日くらいは来てたかな。
引っ越しの準備をしないといけないから。

来ても、前程元気に溢れてはいなかった。
表情や歩き方で、疲れているのがわかった。

私は、宮前さんの奥さんが心配だった。
無理をしないで欲しいけど…
でも、そんな事言ったら余計元気に振る舞ってしまいそうな人だったから
何も言えなかった。


68: trs 2012/10/24(水) 20:03:17.11 ID:K1nLiaS20

奥さんは帰るときに必ず、
「明日、明後日は来れないので、お父さんをよろしくお願いします」
って私に言うようになった。

私はそのとき
「あんまりご無理なさらないでくださいね」
「引っ越しの人出が足りなかったら、いつでも声かけてくださいね」
とかって、声をかけることしかできなかった。

何かもっとできることがあったのかもしれない。
でも、私にはそれしかできなかった。


69: trs 2012/10/24(水) 20:06:46.30 ID:K1nLiaS20

私はだいたいお昼過ぎにいつもお見舞いに行く。
宮前さんの奥さんは私より前か、それか16時くらいに来るかのどちらかだった。


72: trs 2012/10/25(木) 23:37:42.91 ID:HIafwdr80

後遺症からか、物忘れの多い宮前さんのために、
奥さんはいつもらくがき帳みたいなものにメッセージを書いて帰る。

奥さんが来る予定の日、
私が病室に行って、奥さんがまだ来ていないときには必ず
「今日は何日な?」って聞いてくる。

私「○日ですよ」
宮「○日か。あいつ来よれへんのかな。今日来るって書いてあるのに」

宮前さんはいつも笑顔でそう言う。
ほんとは寂しいんだろうけど。


73: trs 2012/10/26(金) 00:09:42.76 ID:sg4LslvN0

最初の方、私は
「きっと来ますよ」「来るといいですねー」
とかって答えてた。

奥さんが来るって書いてる日(らくがき帳に)は絶対に来るの、知ってたから。

それに対して宮前さんはいつも
「ほんまに来るんかいなあー!」
って余計に強がった。

から、対応をちょっと変えてみた。


74: trs 2012/10/26(金) 00:11:41.19 ID:sg4LslvN0

宮「今日は何日な?」
私「○日ですよ」
宮「○日か。あいつ来よれへんのかな。今日来るって書いてあるのに」

私「最近引っ越しとかでしんどいんちゃうかなあ..」

宮前さん、ここでハッとした顔になる。
私、罪悪感にさいなまれる。


75: trs 2012/10/26(金) 00:12:46.92 ID:sg4LslvN0

私「元気に来てくれはるといいですね」
宮「うん……うん。」

宮前さんコクコクと頷く。

宮「あいつもたいへんやねんな、山を下って、ほいでここまでまた来んなあかんから…」

宮前さん遠い目。


この対応はもうしないことにした。


76: trs 2012/10/26(金) 00:14:39.28 ID:sg4LslvN0

宮「今日は何日な?」
私「○日ですよ」
宮「○日か。あいつ来よれへんのかな。今日来るって書いてあるのに」

私「ねー。どうなんでしょうね。来はるかなあ」
宮「なあ。俺にもわからんわ」

宮前さんの笑顔と共に話が終わった。


この対応も、もうしないことにした。


77: trs 2012/10/26(金) 00:29:08.98 ID:sg4LslvN0

宮「今日は何日な?」
私「○日ですよ」
宮「○日か。あいつ来よれへんのかな。今日来るって書いてあるのに」

私「いつも16時くらいに来てますやん!!まだ○時ですよ!!ほらー(私の時計を見せる)まだもうちょっともうちょっと!!」

大阪のおばちゃんって感じで、ぐいぐい行ってみた。
奥さんだったらこんな対応するかなーと思って。


78: trs 2012/10/26(金) 00:35:34.58 ID:sg4LslvN0

宮「……そうかなー。来るかなあ……」

宮前さんは尖った口をさらに尖らせて、照れたような顔で下を向いてた。

私「いっつも来てますやん、16時まであと○時間くらいやから…もうちょっともうちょっと!!」
宮「そうかな、来るかなー」

宮前さんは笑顔だった。
ほくほくした表情、ふふん♪って感じ。

これが宮前さんの求めてた対応のように思えた。
以後、宮前さんの「今日は何日な?」に対して、
いつもこの決まりきったやりとりをするようになった。


79: trs 2012/10/26(金) 14:10:34.84 ID:/FWPlYSF0

ある日、私のおじいちゃんの調子が悪く、
呼んでも呼んでも目を覚ましてくれない日があった。

ときどきそんな日があったけど、
宮前さんはいつも

「ちょっと声出してくれりゃあ嬉しいのになあー」

とかって励ましてくれてた。


80: trs 2012/10/26(金) 14:13:19.71 ID:/FWPlYSF0

その日はなんとなーく、
おじいちゃんを無理矢理起こそうとするのはやめようと思って
おじいちゃんと宮前さんのベッドの間くらいでのんびりしてた。

宮「でも……あんたとこ、いいなあ」

宮前さんがベッドの上に座りながら言った。


81: trs 2012/10/26(金) 14:20:12.63 ID:/FWPlYSF0

宮「あんたとこ、おじいさんはいっつもお見舞いにきてもうてるやん。幸せ者やで」
私「そうかなあ」
宮「うん。そやそや。でも…………ちょっとだけでもわからんのかな?」
私「どうやろねー」

ぐっすり眠る私のおじいちゃんを見ながら、宮前さんは言った。
私のおじいちゃんは、言葉が出ないどころか、
私や家族を認識できているのかどうかもわからない。

宮「ちょっとだけでもわかってくれてたら、いいのにな」

宮前さんの言葉が、温かかった。


82: trs 2012/10/26(金) 14:30:27.84 ID:/FWPlYSF0

ある日もまた、私のおじいちゃんが眠ったまま起きてくれなかった。
そんな日はたいてい、私はおじいちゃんに一方的に話し続けてた。

天気のこと、気候のこと、最近あった出来事とか。

だけど、その日はたまたま、
元気だった頃のおじいちゃんを思い出して
センチメンタルな気持ちになってたから、
自然とその頃の思い出話をしてた。

宮前さんは、ベッドで寝てた。
(宮前さんは、寝てるときもニット帽)


83: trs 2012/10/26(金) 14:37:12.68 ID:/FWPlYSF0

「おじいちゃんが田舎の料理教えてくれた時のこと、覚えてる?
 あれ、私ひとりで作れるようになったよ。今度また作ってみようと思うねん」

おじいちゃんはぐっすり眠ったまま。
私は、その時のエピソードとか、調理法についてどうしたらいいと思う?とかって一方的に話し続けてた。

私のおじいちゃんにはもう前みたいに元気になる見込みはない。
だから、話しててだんだん悲しくなってきて、
そうなると、余計にささいな出来事が思い出されて、
気付いた頃には結構時間が経ってたと思う。


84: trs 2012/10/26(金) 14:45:02.94 ID:/FWPlYSF0

「ずびずび………」

鼻をすするような音が聞こえて振り返ると、
宮前さんがベッドの上に座ってた。
目を真っ赤にしながら、あからさまによその方を向いた。

けど、涙がぽろぽろ頬を伝ってて、泣いてるのがバレバレだった。

次の日から、宮前さんは頻繁に、
「ちょっとでもわかって、声出してくれたら嬉しいな」
って言ってくれるようになった。


85: trs 2012/10/26(金) 14:58:02.34 ID:/FWPlYSF0

ある日、病室に入ると、
宮前さんが病院服の上にニットのセーターを来て、ベッドの上に座ってた。

平然とした顔してるけど、口元は笑ってて、目もいつもより大きく開いてて、
もうなんか言ってよ!って感じのオーラが宮前さんからにじみでてた。


86: trs 2012/10/26(金) 14:58:39.37 ID:/FWPlYSF0

私「宮前さん、セーターめっちゃ似合ってはるー!」
宮「そう?そう?そう?」

それはそれは嬉しそうな笑顔で、宮前さんは言った。

宮「最近涼しなってきたからー。ほら、中にシャツも来てんねん」

首元からぐいっと襟を引っ張りだして、
中に来てるシャツまで見せてくれた。

そんな宮前さんが可愛いかった。


87: trs 2012/10/26(金) 15:05:04.48 ID:/FWPlYSF0

奥さんは、いつもしんどそうだった。
見た感じ、痛めてる膝は悪化してるみたいだった。

一度私が帰るときに、病院の出入り口でばったり会ったけど、
私が声をかけるまで、奥さんはつらそうな顔をしてた。

「宮前さん?」って私が声をかけると、
「あらこんにちはー!」ってとたんに笑顔になって言ってくれたけど。

ひとりで引っ越しの準備や手続きしてるんやもん。
そりゃあしんどかったろうにな。


88: trs 2012/10/26(金) 15:10:37.50 ID:/FWPlYSF0

ある日、宮前さんの奥さんがわーわー言ってた。
宮前さんの帽子を取ったり、かぶせたりしながら。

病室に行って最初に目に飛び込んで来た光景がそれだったから、
なんかもう、笑けてしまってだめだった。


89: trs 2012/10/26(金) 15:14:31.22 ID:/FWPlYSF0

ふたりの会話のスパイラルによると、

奥「ほら、もうあんたこんなに髪の毛伸びてるやんーなんでもっと早う言わんかったのーん」
宮「そんな伸びてるかな」
奥「伸びてるよーもう可哀想に、母さんが看護婦さんに言って、美容師の人に来てもらうからな」
宮「うん」

こんな話を繰り返し繰り返ししてた。
宮前さんは終止甘えた声、なされるがまま。


90: trs 2012/10/26(金) 15:22:53.53 ID:/FWPlYSF0

病院では出張美容師さんのサービスを受ける事ができる。
それで、89から数日の間にはもう、宮前さんの頭はすっきりとしてた。

その日も、もうなんか言ってよ!って感じのオーラが宮前さんからにじみでてたけど
もう私のおじいちゃんのリハビリが始まってたから、
すぐには宮前さんとお話ができなかった。

宮前さんはニット帽を取って、かぶって、なんてしてた。


91: trs 2012/10/26(金) 15:27:58.41 ID:/FWPlYSF0

私のおじいちゃんのリハビリが一段落ついて、その日初めて宮前さんに話しかけた。

私「髪切りましたねー!すっきりしてる」
宮「………そう?」

それはそれは嬉しそうな笑顔で、宮前さんは言った。
ちゃんとニット帽を取って、髪型を見せてくれた。

宮「後ろも大丈夫?変じゃない?」

きれいに切りそろえられた白髪が、また可愛らしかった。
そして、宮前さんは禿げてはいなかった。


92: trs 2012/10/26(金) 17:54:42.82 ID:/FWPlYSF0

思いつく限りに書いてったら、時間軸がバラバラだ。
読んでくれてる人いたらごめんなさい。
でもあともう少しなので、よろしくお願いします。


93: trs 2012/10/26(金) 17:57:59.65 ID:/FWPlYSF0

ある日、病室に行くと、奥さんと宮前さんが仲良くテレビを観ていた。

仲良くといっても、テレビにはイヤホンが差してあって、
宮前さんが一人で両方のイヤホンを独占していた。

病室には一人一人にテレビが用意されている。
プリペイドカードを購入して、それでテレビが観れる。


94: trs 2012/10/26(金) 18:09:05.03 ID:/FWPlYSF0

私「テレビいいですねー」

宮前さんはテレビに真剣で気付かない。

奥「そやねん。この人リハビリ以外なんにもする事ないから、可哀想やなーと思って」

超ヒソヒソ声で話す奥さん。宮前さんイヤホンしてるのに。

奥「この人相撲が好きやから。もうすぐ始まるでしょ?」

確かこの日は、9月場所が始まる数日前だったと思う。
愛されてるな、宮前さん。


95: trs 2012/10/26(金) 18:09:46.57 ID:/FWPlYSF0

奥「前々からテレビみーゆうてたんやけどな、
  病室の人誰もみてないから俺もみいひん、ゆうて聞かんかったんよー」

宮前さん夫婦はいつも声が大きいけど、
こんな風に気を使ってたって事は知らなかった。

奥「それでも、どうしても相撲だけは見せてあげたかってん」

奥さん、いい笑顔してた。


96: trs 2012/10/26(金) 18:16:00.40 ID:/FWPlYSF0

奥さんはその後、
一通りテレビの使い方を宮前さんにレクチャーしてた。

奥「ここ押したらつく!」
宮「ここ押したら、つく……(電源ボタンを入れる)」
奥「ここは音の大きさ!」
宮「ここは音の、大きさ……(音量ボタンを押す)」

このとき、宮前さんはイヤホンつけっぱなしだったから
いつもより声が大きかった。

宮「母さん、母さん、聞こえへんくなった!壊れたんか!」
奥「あんたが音量ボタン押すからや!」

当たり前だけど、奥さんは、宮前さんの扱いに慣れている。


97: trs 2012/10/26(金) 18:18:37.38 ID:/FWPlYSF0

その日、奥さんが帰ったあと、
宮前さんはテレビに夢中だった。

次の日も、宮前さんはテレビに夢中だった。

しっかりイヤホンもつけて、
もちろんニット帽もかぶって、
ベッドに座ってテレビを観ていた。


99: 私事ですが名無しです 2012/10/26(金) 20:57:12.27 ID:YusKkJ8OP

うちのばぁちゃんも脳梗塞で>>1さんのおじいちゃんと同じような感じ。
リハビリはしてないからもう寝たきりさん。寝てるときの方が多い。
でも>>1さんみたいにずっと話しかけ続けたことなんてなかったよ…
今は遠くでなかなか行けないけど、
行った時もっとたくさん話しかければよかった…。

しかし宮前のおじいちゃん可愛いすぎるなぁ。めちゃ和む。。


102: trs 2012/10/26(金) 21:54:28.05 ID:G0seDWo20

>>99さん
もしそう思われるんでしたら、次に行ったときにでも、是非話しかけてあげてください(^^)
私は、話すネタがなくなったときは、ひたすらに自分の話をしています。
本人に取って心地良いのか悪いのかはわかりませんが…

…というか、一度おじいちゃんには、あからさまに『うるさいなあ』って顔されたことがあります(>_<)
でも、おそらく何かしらの『刺激』にはなってると思うので、私は続けています。

宮前さんの可愛らしさが伝わって嬉しいです*
ありがとうございます*


100: trs 2012/10/26(金) 21:45:50.11 ID:G0seDWo20

その次の日は、宮前さんはベッドに寝てた。
テレビに飽きたのかなーなんて思ってたら
急いだ様子で奥さんがやってきた。

奥「もーこの前一緒に練習したやんかあ!」

開口一番に奥さんはそう言った。
宮前さんはベッドから起き上がって、きょとんとした顔で奥さんを見る。


103: trs 2012/10/26(金) 22:08:49.32 ID:G0seDWo20

100の続きを書いていきます。


宮「……なんでや。お前今日来る日やったんか」
奥「あんたが電話かけてくるからやないのー!!!」
宮「誰がや」
奥「あんたが!」
宮「…」
奥「おとーさんが!!!」
宮「俺か!」

宮前さん、ハッとした顔で答える。
ベタな漫才みたいだったから、よく覚えてる。


104: trs 2012/10/26(金) 22:14:18.92 ID:G0seDWo20

奥「この人から電話あったんよー
  かあさん、テレビがつかんことなったーゆうて。
  壊れる訳ないやないのーゆうて、スイッチいれてみ、ゆうたら
  かあさん、どこかわからんってゆうて。
  病院の看護婦さんにでも誰でも聞いてみーゆうたら、
  皆急がしそうにしてるから聞かれへんってゆうて…
  今日から相撲始まるでしょー?
  だから私今日急いで来てんよー」

奥さんが私にわーわー説明してくれた。
わーわー言ってたことを文章にしたら、こんな感じだと思う。


105: trs 2012/10/26(金) 22:28:14.08 ID:G0seDWo20

宮「俺か、俺が電話したんか!」

宮前さんは、奥さんのわーわーをあんまり聞いていないみたいだった。

奥「そ!あんた、スイッチの位置ちゃんと覚えとかんなー。ここ押して」

奥さん強し。
宮前さんは言われるがまま、スイッチを入れる。

宮「音が出んがな、音が」
奥「あんたがイヤホンつけてないからやろー」


106: trs 2012/10/26(金) 22:39:40.37 ID:G0seDWo20

奥さんのツッコミは気持ちが良い。
本当にバランスがとれてる夫婦だと思う。

宮「あっ!聞こえた!」
奥「ほんじゃしばらく観とき」
宮「………え?」
奥「イヤホンしてるから聞こえへんねんやん!」
宮「………え???」

宮前さん、かなり声が大きい。

奥「 イ ヤ ホ ン と っ て ! 」

奥さん、ジェスチャーを交えて口パク気味に言う。


107: trs 2012/10/26(金) 22:41:45.13 ID:G0seDWo20

その後を省略すると、
奥さんはその後ちゃんと音量調節もして、
宮前さんの耳にイヤホンをつけてあげた。
宮前さんは「おまえも聞くか?」って奥さんに聞いたけど、
奥さんは「私は相撲はいいわ」って言って、断ってた。


108: trs 2012/10/26(金) 22:45:18.19 ID:G0seDWo20

私は、いつもは宮前さんのボケを
ただ可愛いなーとか、天然なのかなーとか思いながら聞いてたけど、
この日のやりとりはちょっと度を超えてたように思った。
やっぱり、後遺症から来るものなんだと思う。

宮前さんがテレビをみてる間、
奥さんはぐったりした感じで、
イスにもたれかかるようにして座ってた。


111: trs 2012/10/26(金) 23:37:32.26 ID:G0seDWo20

宮前さんの入院の理由は、心臓を悪くしたからだそう。
前にも一度リハビリ生活を送っていたそうで、
そのときの病気は奥さん曰く「脳の中で血管が切れた」とのことだった。

心臓を悪くしてリハビリ生活を送る、っていうのが
私にはいまいちピンとこなかったけど、
それでも、
宮前さん夫婦が二人っきりで、
いろいろな困難を乗り越えてきたってことだけは確かだと思った。


112: trs 2012/10/26(金) 23:46:35.52 ID:G0seDWo20

次の日、
宮前さんは難しい顔をして
テレビをつけたり消したりしてた。

尖った口をさらに尖らせて。


113: trs 2012/10/26(金) 23:49:26.82 ID:G0seDWo20

しばらくすると、
テレビを消して、ベッドに寝てしまった。

今更だけど、宮前さんはベッドに寝るときはいつも、
両手で布団の上の部分をつかんで
きれいににまっすぐ上向きに寝る。
もちろんニット帽はそのまま。
無防備。


114: trs 2012/10/26(金) 23:55:49.53 ID:G0seDWo20

またしばらくすると、起き上がって、
テレビをつけたり、消したり。

私「相撲みるんですか?」
宮「みたいねんけどな、チャンネルがわからんねん」

宮前さんはチャンネルの変え方がわからなかったよう。
前日にテレビ消す時、間違えて押しちゃったんだろうなーなんて思いながら、
私はチャンネルを変えた。

私「映ったー!」
宮「映った!映った!」

宮前さんの顔がパッと明るくなった。


115: trs 2012/10/26(金) 23:58:40.19 ID:G0seDWo20

宮「ありがとうなーありがとう。ありがとうなー」

宮前さんは、何回も何回もお礼を言ってくれた。

私「いいえー。わからんときは、いつでも言ってください
  私がリモコン代わりになりますんで」
宮「わー、ありがとう。ようしてくれはったわー」

とても嬉しそうな宮前さんをみて、
私まで嬉しい気持ちになった。


116: trs 2012/10/27(土) 00:02:56.20 ID:myVZPUyf0

でも、それ以降、私がリモコン代わりになったことは1度しかなかった。

相撲が終わった後、またテレビをポチポチしてる日があったから、
「好きな番組あったら言ってくださいねー」って言って
チャンネルをポチポチ回してったら、
「そこ!」って言わはって。

宮前さん、国会中継を一生懸命みてた。


117: trs 2012/10/27(土) 00:08:14.83 ID:myVZPUyf0

その日も重ね重ねお礼を言ってくれた。

後で聞いた話だけど、
宮前さんは私がリモコン代わりになったこと、
本当に嬉しく思ってくれてたみたいで、
私のいないときに、私の家族や宮前さんの奥さん、リハビリの先生にまで
「ようしてくれはんねんー」って自慢してくれてたそう。

国会中継以後、宮前さんはテレビを観なくなったんだけど、
それはきっと、テレビのつけかたを忘れてしまったからなんじゃないかなって思う。
そんなに褒めてくれてたんだったら、もっと私を使ってくれてよかったのに。


118: 私事ですが名無しです 2012/10/27(土) 00:08:40.46 ID:???0

宮前さんいい人な感じだけど、>>1も優しいのが文章から伝わってくる


120: trs 2012/10/27(土) 00:23:06.98 ID:myVZPUyf0

>>118さん
恐縮です(>_<)そう言ってくれてありがとう。照れます。


122: 私事ですが名無しです 2012/10/27(土) 00:26:26.32 ID:aIxu9RsGP

>>118
分かる。それだよそれ。なので読み続けれるんだ。。


123: trs 2012/10/27(土) 21:01:41.65 ID:ox5tMK5s0

>>122さん
恐縮です(>_<)ありがとうございます。
これからも是非読み続けてくださると嬉しいです。


119: trs 2012/10/27(土) 00:14:31.49 ID:myVZPUyf0

リモコンの件以来、私と宮前さんは前より少し多くお話するようになった。

私のおじいちゃんのオムツ替えのときとか、
おじいちゃんがよく眠って起きない日とか。

宮前さんが「こっち来ー」って呼んでくれたり、
「おじゃましまーす」って私が行ったり。

宮前さんはベッドの上で、私は奥さんの定位置、
テレビのすぐ隣のイスに腰掛けて。


125: trs 2012/10/27(土) 21:22:18.62 ID:ox5tMK5s0

宮前さんといろんな話をした。

どんな仕事してたのー?とか、
娘さんは何してるのー?とか聞いたりもした。

宮前さんは慣れていない話をするのが苦手みたいで。
話を聞き取る事ができないこととか、
会話が成立しないこととかもあった。

それでも、宮前さんは私が行こうとすると
「もうちょっとおりーなー」とかって
引き止めてくれる事が多くって
嬉しかった。


126: trs 2012/10/27(土) 21:30:14.40 ID:ox5tMK5s0

ある日、私の妹も一緒におじいちゃんのお見舞いに行った。

宮前さんがベッドに座ってたから、妹を紹介してみた。

私「宮前さん、私の妹です」
妹「こんにちはー妹です」
宮「そうですか。どうもどうも」

恥ずかしそうにはにかみながら
妹にペコッと頭をさげてくれた。

宮「なんかなあ、若い子には何を話していいんかわからんわ」

宮前さんは嬉しそうにしてた。
私も一応若いんだけどな。


127: trs 2012/10/27(土) 21:48:09.32 ID:ox5tMK5s0

妹には前々から宮前さんの話をしてたけど、
実際に宮前さんと妹が話をしたのは、これが初めてだった。

妹も宮前さんが大好きになって、
宮前さんが退院してしまう前に
一緒に写真撮らしてもらおうって計画してた。

年賀状のやりとりとか
文通もしたいねーなんて言って。
宮前家に遊びに行けたりしたらいいなーなんて
話したりもしてた。


128: trs 2012/10/27(土) 21:59:57.11 ID:ox5tMK5s0

私のおじいちゃん、宮前さんのいたリハビリ専門病院は、
入院から約3ヶ月で退院しないといけない。

私のおじいちゃんは手術の関係で1日だけ転院したから、
それからもう3ヶ月の間はリハビリ専門病院にいられるようになった。

入院日から数えると、
宮前さんはだいたい10月の中旬以降に退院する予定だから、
妹と、退院の話が出たら行動に移そうねって話してた。


129: trs 2012/10/27(土) 22:06:52.68 ID:ox5tMK5s0

9月の最終週やったかな。
いよいよ、宮前さんの家のお引っ越し日を迎えた。

宮「今日もあいつ来んのかなー」
私「今日は引っ越しの日ですよ」
宮「あー、そうやったかあ」

宮前さんは意外と冷静だった。


130: trs 2012/10/27(土) 22:10:49.90 ID:ox5tMK5s0

次の日、見るからに疲れきった奥さんがお見舞いに来てた。

宮前さんはかまってほしそうにしてたけど、
奥さんはテキパキと宮前さんの身の回りの世話をしてた。

奥「ほんならもう私帰るわ」
宮「なんでや!もう帰るんか!」
奥「引っ越しの準備とか荷物とかたくさんで、しんどいんよー
  もう部屋中荷物だらけやねんー」


131: trs 2012/10/27(土) 22:17:03.59 ID:ox5tMK5s0

奥さんはわーわー言いながら、
その日はさっさと帰ってしまった。
宮前さんは無表情だったけど、
ちょっと寂しそうに見えた。

奥さんはほんとにしんどそうだった。


132: trs 2012/10/27(土) 22:21:28.58 ID:ox5tMK5s0

次の日、宮前さんはちょっと元気がないように見えた。

気分転換になるかなと思って、私の携帯電話を見せてみた。

私の携帯はiphone。
宮前さんの携帯はシニア向け。

宮「最近の電話はこんなんなんか!!!」

宮前さん、目を見開いて、
ものすごくびっくりしてた。


133: trs 2012/10/27(土) 23:17:41.56 ID:ox5tMK5s0

私「ちょっとここ押してみてー」

携帯の画面を宮前さんに見せるけど、
宮前さんはベッドについた手の人差し指を立てて『1』って形にするだけで
目は完全に携帯の画面に釘付けだった。


134: trs 2012/10/27(土) 23:24:51.75 ID:ox5tMK5s0

まあいいやと思って
私はそのまま携帯を操作して
内蔵カメラに宮前さんの顔を映してみた。

宮前さん、さらにびっくりした顔になった。

宮「これ……俺か!」

宮前さんは画面を指差しながら言った。


135: trs 2012/10/27(土) 23:32:43.01 ID:ox5tMK5s0

私「そうですよ、カメラここについてるんです」
宮「ほー………今か!これ今か!」
私「そう、今の宮前さんが映ってるの」
宮「ほー………こんないいのがあんのかー」

話す宮前さんを内蔵カメラで撮ってみた。

私「ほら、今撮ったの。これ」
宮「撮ったの?写真?」
私「うん、写真。ほら」
宮「俺やー。ほー………」

宮前さんは興味津々だった。


136: trs 2012/10/27(土) 23:42:09.06 ID:ox5tMK5s0

ある日、病室に行くと、
宮前さんの奥さんが宮前さんの両足をマッサージしてあげてた。

引っ越しの片付けも落ち着いてたのかな、
「あらこんにちはー」って言う奥さんの顔がイキイキしてて
「こんにちはー」って言う宮前さんの顔もイキイキきしてた。

久しぶりに仲の良い二人の姿を見れたような気がした。


137: trs 2012/10/27(土) 23:48:04.91 ID:ox5tMK5s0

ある日、宮前さん夫婦と先生と事務員さんが4人で話してた。

なんとなく、宮前さんの退院について話してるんだろうなーなんて思ってた。


138: trs 2012/10/27(土) 23:53:04.07 ID:ox5tMK5s0

宮前さん夫婦のことだから、
退院することになったら前もって話してくれると思う。
でももし、急に退院してしまったら、もう会えなくなる。

そう思って、ある日、宮前さんに
「まだ退院しないですよね?」って聞いたら
宮前さんは目をまんまるにして
「まだせんよー」って教えてくれた。

「宮前さんが退院したら、いいことやけど、私寂しくなるわ」って言ったら
宮前さん「そーかなー」って言って笑ってた。


142: trs 2012/10/28(日) 19:01:09.55 ID:fMDewQIx0

宮前さん、一時は膝が腫れて歩くのもダメって言われてたけど、
10月に入る頃にはもうすっかり元気になってた。
もちろん、後遺症をのぞいてだけど。

10月中旬に差し掛かる頃には
そろそろ宮前さんも退院だな、
寂しくなるなーなんて思ってた。


143: trs 2012/10/28(日) 19:13:03.85 ID:fMDewQIx0

奥さんが病院にみえなくても、
宮前さんはそこまで寂しそうにすることもなくなった。

宮前さんが当初は頻繁に使っていた携帯電話も、
少なくとも私が病室にいるあいだは
全く使わなくなってた。


144: trs 2012/10/28(日) 19:21:26.38 ID:fMDewQIx0

ある日、宮前さんは
「なんか寒いな。寒いな」って言いながら
両腕をさすってた。

確かに秋で少し涼しくはなってたけど、
宮前さんはシャツに病院服にセーターも着てて。
少し前からこほこほ咳もしてはったから、
母と私とで、
「宮前さん風邪引いたんちゃうんかなー」なんて心配してた。


145: trs 2012/10/28(日) 19:23:18.64 ID:fMDewQIx0

次の日、宮前さんに微熱が出た。
リハビリの先生が言ってた。
「37℃ですー」って。

宮前さんは微熱があったので
ベッドの上でリハビリしてもらってた。
その日はなんとなく、
宮前さんがぼんやりとしてるようにみえた。


146: trs 2012/10/28(日) 19:25:33.20 ID:fMDewQIx0

その次の日、私は病院に行かず、
母と妹が病院に行った。

妹に聞いた話だと、
その日は宮前さんの奥さんが来てて、
その日も宮前さんには微熱があったそう。


147: trs 2012/10/28(日) 19:36:20.10 ID:fMDewQIx0

宮前さんと奥さんのやり取りを妹が教えてくれた。

奥さんは宮前さんの微熱をすごく心配してたらしい。
帰る前に奥さんがらくがき帳にメッセージを書いて、
それを宮前さんが声に出して読んで、
隣で奥さんも一緒に聞いてたんやって。

宮「 おとーさん、たいちょーどうですか。
  びねつがあるので…おまえ!熱あるんか!!!」

宮前さんはメッセージを読みながら
すごい勢いで奥さんを振り返ったらしい。


148: trs 2012/10/28(日) 19:37:51.41 ID:fMDewQIx0

奥「私じゃないよ、あんたやんか」
宮「俺か!俺熱あるんか!」
奥「そやよー」
宮「お母さんは大丈夫なんか!熱ないんか!」
奥「私はないよー」

妹も母も笑いをこらえるのに必死だったらしい。

宮前さん、面白いけど、
本当に奥さん思いなんだなって思った。


149: trs 2012/10/28(日) 19:50:16.38 ID:fMDewQIx0

次の日、母と私が病室へ行くと、
私のおじいちゃんの向かいのベッドが空いてた。
宮前さんがいなくなってた。

宮前さん、微熱が続いてたから病室変わったんやろうな、
熱が下がったらまたここに来てほしいなー、なんて
母と話してた。


150: trs 2012/10/28(日) 19:53:51.26 ID:fMDewQIx0

そしたら同室の入院患者のおっちゃんが
「そこの人病室変わらはったでー」って教えてくれた。
丁寧に、新しい病室まで教えてくれた。

すぐそこの病室だったから、
私はひとりでで宮前さんの様子を見に行った。
もう、ほんとふら~っと。
しんどそうやったらすぐ帰って来よーくらいの気持ちで。


151: trs 2012/10/28(日) 19:56:55.77 ID:fMDewQIx0

あ、違う!
148と149の間には空白の1日があった。
私の家族が誰もお見舞いに行かなかった日。


152: trs 2012/10/28(日) 20:23:28.33 ID:fMDewQIx0

150の続きです。

教えてもらった病室をのぞくと、宮前さんがいた。
奥さんもいた。

宮前さんは酸素呼吸器みたいなものをつけて
ベッドに横たわってた。
体にいろんな管を通してた。

奥さんはベッドの柵に
下を向きながらもたれかかってた。

私はすぐに部屋に引き返した。


157: trs 2012/10/29(月) 22:35:14.21 ID:rISVR3Mj0

私はすぐ母に報告した。
今さっき見て来た事。

とりあえず、おじいちゃんのリハビリが終わってから、
宮前さんのところに行ってみようってことになった。


158: trs 2012/10/29(月) 22:37:55.73 ID:rISVR3Mj0

おじいちゃんのリハビリが終わって病室を出ると、
ちょうど病室から出てきた宮前さんの奥さんの背中が見えた。

奥さんはふらふらしながらお手洗いに向かってた。

私と母は、宮前さんの病室の外で
奥さんの帰りを待つ事にした。


159: trs 2012/10/29(月) 22:39:31.89 ID:rISVR3Mj0

しばらくすると、奥さんが戻って来た。
壁に手をかけて、ゆっくりゆっくり歩いて来た。

暗い顔をして、うつむいて、
ふらふらと。


160: trs 2012/10/29(月) 22:49:56.69 ID:rISVR3Mj0

私「おばちゃん……」
母「病室行ったら宮前さんおれへんくなってたから……」

声をかけて初めて、奥さんは私たちに気がついた。

奥「そやねんー。私もびーっくりして!」

いつもの勢いで、奥さんは話し始めた。
表情は暗いまま。


161: trs 2012/10/29(月) 22:58:43.16 ID:rISVR3Mj0

奥「電話があったんよ、昨日の朝。
  母さんしんどいよー。薬持って来てーって。
  お父さんが泣きながら電話してくるもんやから、
  私慌てて、朝から病院来たんよ。
  ほいで先生にちゃんと伝えて、ほんでお昼に帰ったんよ。」

奥さんは止まることなく話し続けた。

奥「私美容院の予約してたから、
  午後は美容院へ行ってたんよ、パーマあてる日やったから。
  いつもやったらな、携帯電話、ブーブー鳴るようにしてるから気付くのに。
  なんでやろうな、私昨日気付かへんかってんー」

奥さんの話し方や内容を聞いてて
奥さんが相当動揺しているのがわかった。


162: trs 2012/10/29(月) 23:07:02.14 ID:rISVR3Mj0

奥「病院やら娘から電話がかかってきてて、
  私が電話に出らんから、娘のとこへ電話が行ったみたいで、
  娘に聞いたら、お父さんのとこ行けってゆうから、
  でも私も気が動転してしまって、
  もう5時なってたから、
  こんな時間に病院へのバスがないわーゆうて、
  もう5時やったから、」

奥さんは一生懸命話してくれたけど、
正直、詳しいことはよくわからなかった。

ただただ、奥さんは話し続けた。


163: trs 2012/10/29(月) 23:27:42.34 ID:rISVR3Mj0

奥「ケアマネージャーさんに電話したら、
  私を車で迎えに来てくれる、ゆうて。
  ほいでここまで一緒に来てん。
  すぐに主治医の先生と、今後の処置についてお話したんやけど、
  私気が動転してしまって、何のことやわからんくって。
  あとでケアマネージャーさんにもう一回話ししてもらってやっとわかってんけど、
  もうお父さんも年やから、
  無理矢理生かしてあげるのも可哀想やし、
  もう、そのときはそのときで、自然に、ってお願いしてん。
  お父さん、肺炎になってしまって、
  それに心臓悪してたんやけど、
  脈も弱くなってきてて……」

奥さんの話はこんな感じだった。
私も完璧に覚えてる訳ではないけど。

奥さんが混乱してはったのと、
たいへんな事態が起きてたってことは確か。


164: trs 2012/10/29(月) 23:32:29.99 ID:rISVR3Mj0

奥さんの話からの私の理解をまとめると、こんな感じ。

前日
・宮前さんから電話。
・奥さん、朝から病院へ。先生に宮前さんの状況を伝える。
・昼、美容院へ行くため、病院から出る。
・夕、宮前さんの容態急変。病院からの連絡が奥さん、娘さんのところへ。
・17時、娘さんと連絡を取り、奥さんが宮前さんの容態を知る。
・ケアマネージャーと共に病院へ。
・先生と今後の処置について話をする。
 →延命治療をしないと希望

宮前さんの状態
・肺炎、心臓病の悪化

奥さんが前日から泊まりこんではったのか、
それとも一度帰ったのかどうかはわからなかった。


165: trs 2012/10/29(月) 23:41:47.67 ID:rISVR3Mj0

奥さんは話を続けた。

奥「本当やったらな、今日の午後、一時退院して、
  新しいお家へ帰ることなっててん。
  お父さん、新しいお家へ行くの、ずっと楽しみにしてたのに…」

私も母も、何も言えなかった。


166: trs 2012/10/29(月) 23:45:43.44 ID:rISVR3Mj0

私「宮前さんに会っても良いですか……?」

やっと出た言葉がそれだった。

奥「うん、会ってあげて。お父さんも喜ぶわー」


私と母は、宮前さんの奥さんについて病室へ入った。


167: trs 2012/10/29(月) 23:50:57.05 ID:rISVR3Mj0

奥「お父さん!何してるの!!!」

宮前さんはベッドの柵を持って、起き上がろうとしてるところだった。

宮「だって、母さん長い事帰ってけえへんから、心配になって…」
奥「心配になってやないわー!あんたじっとしとかなあかんでしょ!!!」

正直、拍子抜けした。
宮前さん元気やん。


174: trs 2012/10/31(水) 23:59:13.04 ID:FmeMNQWJ0

私「そうですよ、寝とかんなー」
宮「なんでや、なんでや」

私も母も、奥さんに続いて宮前さんに声をかけたけど、
それでも宮前さんは起きようともぞもぞした。

酸素マスクと、宮前さんの体に繋がった管を除いては、
ほんと、宮前さんは元気に見えた。

声もいつも通り、動きも意識もハッキリしてる。
さっきの奥さんの話に出て来た宮前さんと目の前にいる宮前さんが
まったく別人のように思えるくらい。


175: trs 2012/11/01(木) 00:04:19.28 ID:toAJUC8o0

奥さん、母、私の3人でわーわー言ったから
さすがに宮前さんもおとなしくなって、ベッドにもたれかかった。
ベッドは60度くらい上がってたから
宮前さん、ほとんど座ってるような感じ。

宮「でも、でも、」

元気にもぞもぞ動いてたからさっきまでわからなかったけど
宮前さん、肩で息をしてた。

宮「しんどいよー、しんどいよー」

何度も言うけど、肩で息をする意外はほんとに元気に見えた。
ニット帽もかぶってたし。


176: trs 2012/11/01(木) 00:10:27.50 ID:toAJUC8o0

私「しゃべらんとー。宮前さん、ゆっくりして。」

宮前さんの左腕に触れた。
宮前さん、薄手のカーディガンを着てはったんやけど、
その上からでもわかるくらい、宮前さんの腕は温かかった。


177: trs 2012/11/01(木) 00:14:27.30 ID:toAJUC8o0

私母「また会いに来ますね」

あんまり覚えてないけど
その後二言三言奥さんと話して、
宮前さんに声をかけて、
私と母はすぐに病室を出た。

私たちがいると
宮前さん平気なフリしそうだったから。


178: trs 2012/11/01(木) 00:26:50.30 ID:toAJUC8o0

私の祖父母も何度か危ない状態になったことがあって。
その度に延命措置についての決断をしたり、
山場です、的な場面にもいくつか遭遇した。
幸いなことに、ふたりとも、今も生きてる。

それに、危ないときの容態は
ふたりともいつも昏睡状態だった。
だから余計に、
そのときの宮前さんの容態が
良いものに思えて仕方がなかった。


179: trs 2012/11/01(木) 00:31:13.49 ID:toAJUC8o0

「宮前さん早く元気になるといいな」
「ちょっと長引きそうやね」
「しんどそうやったね」
「可哀想やったね」
「でも、こんなん言ったらあれやけど
 宮前さん、大丈夫な気しかせえへんわ」
「私もー!宮前さんやったらきっと大丈夫やわ」
「けど、奥さんが心配やなあ…」

私と母はのんきにこんな話をしてた。


181: trs 2012/11/01(木) 00:49:15.99 ID:toAJUC8o0

帰る道すがら、宮前さんの病室の前を通った。

私はベッドにもたれる宮前さんを見た。
宮前さんは最初目を閉じて寝てるみたいだったけど、
ふと目を覚まして、私を見た。


182: trs 2012/11/01(木) 00:50:32.09 ID:toAJUC8o0

目が合って、私は右手を肩の高さくらいまで上げた。

宮前さんも同じように、右手を肩の高さくらいまで上げて
頷く程度に頭を下げた。

私も、頷く程度に頭を下げてから
にこっと笑った。

宮前さんも、にこっと笑った。

病室の前を通り過ぎるあいだ、一瞬の出来事だったけど、
あのとき、宮前さんと私は確かな意思疎通ができてたって、信じたい。


184: trs 2012/11/01(木) 00:56:49.76 ID:toAJUC8o0

次の日。

病院へ行く前に、宮前さんの奥さんへの差し入れを買った。

病院に着くと、真っ先に宮前さんの病室に向かった。

病室をのぞくと、別の患者さんがいた。


185: trs 2012/11/01(木) 01:02:48.94 ID:toAJUC8o0

部屋を間違えたと思って、隣の病室をのぞいたら、また別の患者さんがいた。

リハビリ表が近くにあったので、それを確認した。
宮前さんの欄には、ボールペンで二重線が書かれてた。

肺炎が悪化して、別の病院か病棟に移ったんだと思った。


186: trs 2012/11/01(木) 01:07:26.68 ID:toAJUC8o0

宮前さんどこにいるんだろう。
これからどうやって連絡をとろう。
奥さん大丈夫かな、なんて考えてた。

私のおじいちゃんのリハビリの時間になって、リハビリの先生が来た。
その先生は、私と宮前さんが親しくしていたのをたぶん知ってた。

私「宮前さん、病院移らはったんですか?」

だめもとで聞いてみた。


187: trs 2012/11/01(木) 01:09:26.13 ID:toAJUC8o0

先「患者さんの情報なので、本来であればお伝えしてはいけないのですが」

先生は前置きをしてから、言った。

先「今朝方、お亡くなりになりました」


188: trs 2012/11/01(木) 01:17:59.86 ID:toAJUC8o0

それが10月18日の出来事。


もう半月近くたつけど、
私は未だに宮前さんの現状を、実感できてない。

携帯に保存してある宮前さんの写真とか、今でも平気で見れちゃうし。
家族にも、深い事何も考えずに宮前さんの話とかしちゃうし。

服屋さんに行ったときも
宮前さんがかぶってたのとそっくりのニット帽が売ってて
そのお店がまたモードな雰囲気のお店で笑けてしまったり。


189: trs 2012/11/01(木) 01:26:34.07 ID:toAJUC8o0

読んでくださった方々、
コメントくださった方々、
ありがとうございました。

宮前さんとの思い出、
エピソードを共有できたようで、嬉しかったです。


190: 私事ですが名無しです 2012/11/01(木) 05:47:45.04 ID:???0

あっさり亡くなってしまったんだね・・・。


191: 私事ですが名無しです 2012/11/01(木) 07:42:56.28 ID:2AI98YpGP

すごい素敵な夫婦だな
宮前おじいちゃんもっと長く生きたかっただろう…とても無念だけど
先に奥さんが亡くなっておじいちゃんが残されるよりよかったんじゃないかなあ
奥さんもせっかく引っ越しまでして帰りを待ってたのにね、
寂しくてつらいだろうけど…
でも絶対この二人は生まれ変わってもまた一緒だね

生きてたら色んなことがある
>>1や妹さんも幸せな人生歩んで下さい
素敵なお話ありがとう
宮前おじいちゃんのご冥福をお祈りいたします。


192: 私事ですが名無しです 2012/11/03(土) 22:35:27.86 ID:P6gxeX+xP

ほのぼの良スレ


169: 私事ですが名無しです 2012/10/30(火) 02:43:20.15 ID:qri+nuaUP

宮前さんがほんまに好きになってもうた


8月1日に移転しました!

他の記事もぜひ移転先でお楽しみください!


移転先 → http://shiawasewalk.doorblog.jp/

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